先週の報道ですが、明治のロングセラーチョコレート菓子『たけのこの里』の立体商標が登録になりました。ヤフーニュースにも掲載されていたので、ご存じの方も多いと思います。

登録第6419263号

20210901_たけのこの里

この商標は、商品の立体的形状のみからなる商標であって、原始的には自他商品識別力を有さない商標ですが、使用により事後的に識別力を獲得したとして3条2項が適用されて登録となったものです。

立体商標の識別性については、以下の規範があります。

【商標法】3条1項3号
その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状(包装の形状を含む。第 二十六条第一項第二号及び第三号において同じ。)、生産若しくは使用の方法若しくは 時期その他の特徴、数量若しくは価格又はその役務の提供の場所、質、提供の用に供す る物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格を 普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標

【審査便覧】49.02
(1)立体的形状が、商品等の機能又は美感に資する目的のために採用され たものと認められる場合は、特段の事情のない限り、商品等の形状そのも のの範囲を出ないものと判断する。
(2)立体的形状が、通常の形状より変更され又は装飾を施される等により 特徴を有していたとしても、需要者において、機能又は美感上の理由によ る形状の変更又は装飾等と予測し得る範囲のものであれば、その立体的 形状は、商品等の機能又は美感に資する目的のために採用されたものと 認められ、特段の事情のない限り、商品等の形状そのものの範囲を出ない ものと判断する。

これらの規範に照らして、特許庁の審査では一旦3条1項3号の拒絶理由が通知されていますが、意見書で3条2号の適用を主張して容れられたものです。

【商標法】3条2項
前項第三号から第五号までに該当する商標であつても、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものについては、同項の規定にかかわらず、商標登録を受けることができる。

姉妹商品の「きのこの山」の登録(登録第6031305号)に続く登録であり、商品の形状そのものからなる立体商標(除く、容器形状)は、めろん君の知る限り、食品分野ではこの2件だけです。
立体商標における3条2項適用はかなりハードルが高く、たとえば、東京銘菓のひよこ饅頭でも認められませんでした。(商願2015-74723、不服2016-12485)
それだけに、この登録はブランドの保護・差別化に大いに寄与するものと思われます。

ところで、食品の形状そのもの(除く、容器形状)からなる立体商標について、一つ疑問が残ります。
今回の登録も含め、食品の形状そのものは、需要者の購入の意思決定の時点においては、需要者の目に触れることはなく、購入の意思決定時点において需要者の目に触れるのは、容器包装のみです。
食品の形状は、消費の時点では需要者の目に触れますが、果たしてこれで商標の使用と言えるのでしょうか?

参考となる判決にパチスロ機リノ事件(最判H12.2.24)があります。
この事件では、識別力の発揮の要件の一つとして視認可能性が挙げられており、これに照らすと食品の立体的形状が識別力を発揮しているとは、無条件に断言はできないように思われます。購入の意思決定時に視認されている必要があるのか、消費の時点で視認されていれば足りるのか。
商標の機能の一つである品質保証機能という点から見ると、消費時点の視認で足りるようにも思いますが、めろん君は、基本的には購入の意思決定時点で視認されている必要があるように思います。